CH2次創作サイト
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今年もこの日がやってきた。

ー「あたしがあんたの誕生日を決めてあげる!」ー

晴れ渡った青空の下、屋上の手すりに寄りかかりプカリと煙草をふかしながら、あの日の事を思い出していた。

あれから3年の月日が流れた。その間に、俺たちの関係も緩やかに変化し、今じゃ公私共に「パートナー」となっている。


ふと下を見れば、桜のつぼみも先が綻び始めてきていた。

今年は教授宅で花見兼俺と香の誕生日パーティーをする事になっている。だから、今年の2人の誕生日は2人きりだ。

「・・いらん気を回しやがって・・・」

俺たちの関係が一歩進んでから初めて迎える誕生日だから。と、お節介な連中が気を利かせてくれての事。

キャッツは今日は臨時休業、歌舞伎町は立ち入り禁止。先手を打たれた俺は、大人しく家に居るしかなかった。

香は朝から忙しく動き回っているので、とても相手にはしてくれない。かといって、街に繰り出してナンパする気にもなれず、こうして屋上で日向ぼっこしているのだ。

「・・・平和だなぁ・・・」

ぼんやりと下を見ていると、愛しの相棒が両手にいっぱいの荷物を持って帰ってくるのが見えた。


10年前に出会った時から、あの真っ直ぐな瞳に惹かれていたのかもしれない。

香は俺に、他人を、自分を愛する事の意味を教えてくれた。そして「生きる」という目的を与えてくれた存在。

自分にはない強さと優しさを持つ唯一無二のパートナー。

もう、香なしでの生活など考えられないのだ。

「・・・あの鈍感さがなけりゃ、もっといいんだけどな・・・」

極度のシスコンの槇村の元で純粋培養されたお嬢さんは、俺とは正反対に、色事に対して超がつくほどの鈍感(天然)ぶりを発揮している。

お陰で、お互いの体温を感じ合いながら眠れるようになるまで半年かかったのだ。


「・・・今夜はオールナイトもっこりだなぁ~」

身体を重ねる様になって一年が経とう言うのに、未だに初々しい反応をみせる香の姿を思い浮かべ、思わず顔が緩む。


「・・・何ニヤケてんのよ。気持ち悪いなぁ~。」

いつの間にか、完全に妄想の世界に浸っていた俺の背後にいた香。

「い、いやぁ~・・・。春だなぁ~と思って・・・あ・・・あはは~・・・」

今想像していた事がバレた日には、「このスケベがぁ~!!お前の頭の中にはそれしかないんかぁ~!!」と言われて簀巻きにされてしまう。

この良き日(?)にそれだけは避けたい。必死に言い訳する俺を、ジロッと見る香の視線に、冷や汗が背を伝う。

「・・・まぁ良いわ。今日は詮索しないであげる。それより、ご飯の用意出来たわよ?」

危うく難を逃れた俺は、空きっ腹を抱えていい匂いが漂うキッチンへと足を向けたのだった・・・。



「何か、昼から豪勢だねぇ~・・・。」

ハンバーグに唐揚げ、ビーフシチューにサラダにスープ等々、俺の好物ばかりがテーブルに置ききれない程並んでいる。

毎年、香が俺の誕生日にこうした料理を作ってくれるのはいつもと変わらないのだが、違いはいつもは夕飯に出てきているのが昼飯だという事だ。

ご馳走を前に、さっそく食べようとした俺の耳に香の小さな呟きが聞こえた。


「・・・夕飯にしようと思ったけど、撩が夕飯作らせてくれないかな・・・と思って・・・」

頬をうっすらと染めた香の小さな呟き。

「・・・どういう意味かな?カオリン?」

意地悪く聞いてみると、真っ赤になった香が俯いて言った。

「だ、だって!!あんたってば夜になるとあたしの予定なんて無視して、部屋に連れてくんだもん!!せっかくの誕生日なのに、ご馳走してお祝いしたかったのよっ!!だから朝から頑張ったの!!!」

ぎゅうっと膝の上で手を握りしめて、真っ赤になっている香の姿に、顔が緩んだ。

「・・・んじゃ、夜は遠慮しないでいいって事だなぁ?いやぁ~カオリンの心遣いに、撩ちゃんか・ん・げ・き♡」

ぐふふっと笑うと、香が潤んだ瞳でキッと俺を見上げて言った。

「今日は撩の誕生日でしょ!?だ、だから好きにしていいわよっっ///それが、今年のあたしからの誕生日プレゼント!!」

「・・・へ・・・?」

思わぬ発言に、思考が一時停止。

「な、何よっ!!不満!?」

羞恥のためか、今にも泣き出しそうな香をみて、苦笑いしてしまった。

・・・どんだけ頑張ってくれてんだか・・・

緩みきった顔が戻せない。

可愛い可愛い恋人からの、最高のプレゼントだ。今日くらい、いいだろ?

「・・・最高の誕生日だな・・・。ま、今日は2人っきりだしぃ~?取りあえず、カオリンが作ってくれたご馳走食べよっか。」

席を立ち、香の耳元でそっと囁く。

「・・・デザートは、もちろん夜のカオリンだろ・・・?」

こくんと頷いた香。

甘い誕生日はこれからだ・・・・


**************************************
撩、お誕生日おめでとう!!今年、いくつになったんですかねぇ~・・・万年ハタチの冴羽さん・・・。(笑)

カオリン、夜頑張ってくれぃ・・・と思いながら書いてた私です。







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【2014/03/26 00:01】 | 短編
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サイトを立ち上げて1年になりました。この一年、迷走している当サイトに足を運んで下さった皆様、本当にありがとうございましたm(_ _)m

沢山の拍手とコメント、ありがとうございました。本当に嬉しかったです!!

どうぞこれからもよろしくお願いしますm(_ _)m


3月は、香と撩にとっては、自分たちの誕生日とは別に、槇兄との別れの季節でもありました。

大切な人を見送った時の痛みや悲しみは、時を経ても同じ季節が巡ってくると、古傷が痛むようにじわりと心に痛みをもたらします。その痛みを越えることができたのは、お互いの存在があったからなのだろうな・・・と、この歳になって、実感を伴って理解するようになりました。

そう思うと、CHの世界って「大人」の世界だったんだなぁ~・・・と。

深いですよね・・・。

命の大切さも、生きることの意味も、愛する事、人を想う気持ち・・・などなど。

そんな世界感を感じつつ、これからも自分なりのお話を書いて行けたらいいなぁ~と思っています。


春は別れの季節でもありますが、新しい出会いの季節でもあります。どうか、皆様にも素敵な出会いがありますように・・・(*'▽'*)







【2014/03/26 00:00】 | つぶやき
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「・・・どぉすっかなぁ~・・・」

今日はホワイトデーだ。店先には可愛らしいお菓子がところ狭しと並んでいる。

「ナンパ」と称して家を出たはいいが、目的のものが見つからずさっきから同じよなところをウロウロしている。


歌舞伎町のおねぇさん達(元男も含む)のお返しは、香が例年通り手作りのクッキーを用意してくれているから問題ないのだが・・・。



今年のバレンタインは、風邪をひくという失態(?)を犯してしまったため、香に簀巻きにされてベッドに寝かされていたのだ。途中、エロイカのママとかずえちゃんがチョコを届けてくれた以外、外にも出ず香と2人きりだったのだ。

いつもなら、歌舞伎町のおねぇ様方から頂くチョコの山に紛れ込むように置かれる香のチョコだが、今年は違った。

俺が寝ていると思ったのだろう。簀巻きにされたまま寝ている(ふり)をしていた俺の前髪を暫く指で弄んだ後、額の傷跡にそっとキスをしてくれたのだ。

今も覚えている、柔らかくて温かい感触。奥手な香にとっては精一杯なキスだったのだろう。

無意識のうちに額の傷を撫でている自分に気が付き、思わず苦笑いする。


歩き回った末、店先に見つけた小さな「ソレ」を見つけた俺。誰にも見つからないようにこっそりと買うと、アパートへと帰った。


そっとリビングを覗く。

・・・誰も居ないな・・・

時間を見れば、香はまだキャッツにいる頃だろう。

俺は買ってきた「ソレ」をダイニングテーブルに置くと、リビングのソファーにひっくり返って香が帰ってくるのを待った。


「ただいまぁ~・・・って、あれ?どうしたの?これ・・・」

買い物袋を持ってキッチンに向かった香が手にしているのは、オレンジ色をした丸くて小さな花束だった。

「ん~?あぁ、それか。・・・まぁ・・・な。そうだ、香コーヒー入れてくれよ!な?」

明らかに挙動不審な俺の態度に、首を傾げながらも渋々コーヒーを入れて来てくれた香。

手には先ほどの花束と、ミック達にもらったであろうお返しのクッキーを持っていた。

「もう・・・。あたしだって帰ってきたばっかりなのに・・・。コーヒーくらい自分でいれなさいよ。」

そう言いつつ、自分の分のコーヒーも持って来ている。

「夕飯にはまだ早いから、おやつにしようかな」

そう言って、持ってきたクッキーを開けようとする香の手をグイッと引き寄せた。


「ちょっ・・なっ・・・何!?」

腕を引かれてソファーに倒れた香が焦った顔で俺を見上げる。

「ん~?何って、今日はホワイトデーだろ?撩ちゃんからのお返し。」

起きあがろうとする香の肩をそっと押さえこむと、額に唇を寄せる。

途端、ピキンと音をたてそうな位の勢いで香が固まった。

そのまま、鼻と鼻をすり寄せる。

香が息を呑んだのがわかった。お互いの息が感じられる程に近づいた唇。

ぎゅうっと香が目を瞑った。


「・・・んっ・・・!?」


今度は唇にキスされると思っていたのだろう。予想外の展開に、香が目をパチクリさせている。

「・・・な・・・なによ・・・。これって・・・?」

そう。香が目を瞑った事を確認した俺は、ポケットの中に隠していたマカロンを口移しで香にプレゼントしたのだ。

真っ赤になっている香は、まだマカロンを口にくわえたまま固まっていた。

「バレンタインには、香ちゃんからここにキスしてもらったから、撩ちゃんからは『倍替えし』ってことで♪」

「へっ・・・?」

ポロリと香の口からマカロンがこぼれ落ちた。

「あ・・あんたっっ!!寝たふりしてたの~!?」

香が更に赤くなって叫んでいる。

「お互い、サプライズってことで?ちゃぁんと返したからな?」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
バレンタインネタの続きです。

ちなみに、花束は「ストロベリーフィールド」をイメージしてます。花言葉は「変わらぬ愛」「永遠の恋」だそうです。

ホワイトデーのお返しにも意味があるそうで、キャンディーは「私もあなたが好きです」、マカロンには「特別な人」という意味があるそうです。知りませんでした~・・・。男性陣、気をつけてくださいね~。


【2014/03/14 00:00】 | 短編
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翌日、俺は情報屋に依頼の件で聞き込みに回っていた。

教授に話しじゃぁ大した事ない様だったが、探れば探るほど企業と代議士の癒着と悪事が見えてくる。売春に麻薬密売、暴力団との癒着、闇献金等々・・・。ちょっと探りを入れただけで、ネタは掃いて捨てる程あるのだ。

(・・・なぁんかイヤな予感がすんだよなぁ~・・・)

一通り聞き込みを終えた所で、いつもの公園のベンチに座りタバコをくわえていると、嗅ぎなれた香水の匂いがした。

「ちょうど良かったわ、撩。頼みたい事があるの。」

視線を上げると、そこには冴子の姿があった。

・・・お出でなすったか・・・

大概、こんなヤマは冴子が絡んでいるのだ。

「・・・依頼ならお断りだぜぇ~?もっこり報酬踏み倒されたまんまだもんなぁ~」

冴子から逃げるようにベンチから立ち上がろうとしたが、それを遮るように彼女が前に立ちはだかった。

「・・・お願いよ。撩。・・・恩田代議士とタカサキカンパニーが手を組んで、麻薬密売と売春をしているの。証拠を掴みたいのよ・・・。家宅捜索したくても、恩田が警察上層部に圧力をかけているから思うように捜査できないの!明日、タカサキカンパニーの新年会があるんだけど、そこで麻薬の取引が行われるって情報があるのよ!私と一緒に潜入して欲しいのよ。」

・・・ターゲットが教授と一緒という事を考えれば、冴子に協力してやりたいとは思うが・・・。

冴子の話しと集めた情報を併せて考えると、冴子の依頼を受けるとなると危険が伴う。盗聴くらいなら香を連れて行ってもいいが、密売の現場を押さえるとなると話しが違ってくる。口にはしないが、明日のパーティーを密かに楽しみにしている香の姿が頭を過ぎった。

「・・・悪いな。先約があるんでな。・・・まぁ、代議士のほうは無理かもしれんが、タカサキカンパニーの方の悪事の盗聴くらいなら協力してやれるけどな・・・。」

ポケットに手を突っ込んで歩き出した俺の背中に冴子の泣きそうな声が響いた。

「お願いよ・・・。槇村が・・・槇村と私が追ってた2人なのよ・・・。やっと、尻尾を捕まえられそうなのっ!これを逃したら次いつになるか分からないのよっっ・・・」

『槇村』という名に、思わず足が止まる。思わず振り返ると、いつもの強気な冴子の顔はなかった。迷い子の様な、今にも泣き出しそうな顔。

両手をコートのポケットに突っ込んだまま空を見上げると、ふぅっとため息を一つこぼす。

「・・・少し、考えさせてくれ。今夜にでも連絡する。」

槇村が遺したヤマなら、冴子にとって特別なものなのだろう。冴子の気持ちもわかるが、香の事もある。どうしたら一番いいのかなんて、すぐには返答できなかったのだ。



遠回りをしながらアパートへ帰ると、もう夕飯の時間だった。キッチンから漂う味噌汁の匂いに、腹の虫が騒ぎ出す。

「香~。帰ったぞぉ~!」

何事も無かったかのような態度で帰宅を告げると、「手洗ってらっしゃいっ!!」という声が返ってきた。

苦笑しながらもおとなしく従う。

鼻歌交じりでキッチンに立つ香の後ろ姿を見てしまった俺は、冴子の依頼の件を言い出せずにいた。


夕飯が終わりソファーの寝ころびながら冴子の件を考えていると、食後のコーヒーを持って香がやってきた。

ソファーの端に座ると、ポケットから例のイヤリングを取り出して眺めている。

「ね、明日の事なんだけど・・・一応ローマンも持った方がいいよね?・・・それにしても、教授ってば、こんな可愛いイヤリングくれるなんて・・・」

久しぶりにみる香の嬉しそうな表情(かお)に、ますます冴子の件が言いだしにくくなった。

(・・・どうすりゃいいんだよ・・・)

黙っている俺に違和感を覚えたのか、それまで楽しそうにしゃべっていた香が話すのをピタリと止めた。

「・・・香・・・?」

「・・・撩、困った顔してる。・・・どうして?」

俺の顔を、瞳をじぃっと見つめてくる香。

「・・・あ、あのな、実は冴子が・・・」

「こっちの依頼の方が先じゃないっっ!!どうして!?どうして迷うのよっ!!」

言い掛けた俺の言葉を遮るように香が声を荒げた。

「・・・おま・・・何で冴子の依頼の事知ってんだよ・・・?」

香が居ない場所での話しだったはずなのに・・・。動揺する俺の目には、今にも泣き出しそうな香の顔が映っていた。

「・・・聞いたのよ。偶然。あんたを探しに公園まで行って・・・。」

香の気配に気が付かなかった己の不甲斐なさに、思わずため息がこぼれた。

「・・・いや・・・な。冴子も困ってるみたいだし・・・な・・・」

なおも返事を濁す俺に業を煮やしたのか、香が泣きながら両手を突き出して言った。

「・・・んでよ。・・・選んでよっ!あたしか、冴子さんか。どっちか選んでよっっ!!」

イヤリングが握られているのは右手だ。迷わずその手を取れば良いのだろうが、今度は冴子の泣き顔が頭を過ぎった。


どちらの手もとれないでいる俺に、イヤリングが投げつけられた。

「もういいっ!!冴子さんとやれば!?あたしなんかより、冴子さんとやる方がいいんでしょ!!」

「ちょっ・・・ちょっと待てよっっ!!香っっ!!」

引き留めようとして伸ばした手を振り払われた。


バタンッ


勢いよく閉められたドア。一度も振り返らなかった香。

「・・・っきしょ・・・。どうすりゃ良かったんだよ・・・」

泣かせたかった訳じゃない。だが、結果として香を傷つけてしまったのだ。

俺は投げつけられたイヤリングを握りしめながら、ため息をつくしかなった・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
お待たせしました。遅くなってスミマセン・・・。

撩ちゃん、カオリンをまた泣かせてます。しょうもない・・・。

撩にとっては、冴子さんから槇兄を奪ってしまった。という負い目みたいなのがあるんじゃないかな?と思ってかいてみました。撩にとって、香と冴子に対する「思い」は別なんでしょうけど・・・。普段の行いがモノをいう。というか・・・

さてさて、香を泣かせてしまった撩は、このあとどうするのでしょうか・・・・






【2014/03/11 00:00】 | リクエスト
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パーティーがあるのは2日後。それまでに教授から渡された資料に目を通し、ターゲットの事を調べ上げなくてはいけない。・・・まぁ、ここまではいつもと同じなんだが。

隣をチラリと見ると、助手席では相変わらず黙ったままの香。俺の視線に気がついたのか、赤い顔をして、あわてたようにしゃべりだした。

「あ・・・そうだっ!あたしたち、そんなパーティーに着ていける服なんて持ってないから、絵里子に頼まなきゃね?!」

「げっ・・・。絵里子さんかよっ!?んなもん頼んだら、まぁたモデルしてくれって押し切られんぞ?」

「大丈夫!!今回はちゃんと教授が報酬として払ってくれるから。それに僚の体格だと、既製品じゃ無理でしょ?」

「・・・まぁ、確かにそうだな・・・」

ぶつぶつ呟いている間に、香は携帯を取り出すとさっさと絵里子さんに連絡をとってしまったため、俺たちはそのまま絵里子さんの店に向かうこととなったのだ。


「香~!合いそうなのを何着か用意したからフィッティングルームへ行きましょ?あ、冴羽さんも一緒に来てね?2週間くらい前に、あなたたちの知り合いって人から、フォーマル一式揃えておいて欲しいって連絡があったから、前もって用意ができてたのよ~。ふふふ~」

嬉しそうな絵里子さんをみて、俺たちは唖然とするしかなかった。


「「・・・。」」

狸爺め。ここまでお膳立てするか・・?

逃げ道を完全に絶たれた俺は、大人しく絵里子さんの後をついて行くしかなかった・・・。


俺の服はすぐに決まってしまったため、暇を持て余した俺は、香のほうのフィッティングルームへと足を向けた。

そっとドアを開けると、ブルーのロングドレスを纏った香が見えた。髪はアップにしており(もちろんウイッグだが)俯いたときに見えた襟足の白さに、ドキリとする。

裾を摘んでクルリと回ってみせる香は、いっぱしの「大人のオンナ」で。思わず見とれてしまった。

アシスタントの子がドアに向かってきたので、慌てて逃げ出した俺。さっきの光景が頭から離れない。

2日後、あの香と「夫婦」を演じなけばならないのだ。

「・・・大丈夫か・・・俺・・・?」

ロビーにある喫煙場所で、煙草を咥えながら思わず呟いてしまった。



奥多摩以降、俺たちの間には何もない。ナンパする俺を香が追い回しハンマーする。仕事をえり好みする俺の尻を香が引っぱたく。

端から見れば、何も変わってないのだろう。俺自身も、香とはこのままの距離でいるのが一番良いのだと思っていた。そんな俺の気持ちを察したのか、香もまた、何も言わなかった。

だが、最近気がついたことがある。ほんの一瞬、香が垣間見せる表情に以前とは違うものを感じるることがあるのだ。他愛もない会話の途中で見せる穏やかな微笑み。目の前の俺の話を聞いて、相槌を打っているのに、その目は遠くを見つめいるのだ。

そのことに気がついてから、俺は不安になった。香が俺から離れていくのではないのかと。香の優しさに甘え、自分のことしか考えていなったのだ。


「女なら、好きな男(ひと)に愛されたいって思うのは当然でしょ?」


先日美樹ちゃんに言われた言葉が頭を過ぎった。

いい加減、俺も香と向き合わなければいけないのだ。もう手放せない存在になっているのだから。

「依頼」とはいえ、これはチャンスなのだ。これを逃したら、香らしい笑顔がもう見れないような気がする。


「・・・腹括るしかないってか・・・?」

上手くいくかは神のみぞ知る・・・ってところか?


ソファーから立ち上がるとポケットに両手を突っ込み、絵里子さんとこちらに歩いてくる香のほうへと向かっていった。



【2014/03/02 00:00】 | リクエスト
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