CH2次創作サイト
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作戦決行日までの3日間。俺たち4人は顔をつき合わせて、お互いの動きを何度も確認していた。

口には出さないが、それは実践において初心者である香の不安を軽減させるためでもあった。


そして決行日前日。

「いいか、香。焦る必要はない。今のお前なら余裕を持って出来るはずだ。美樹も一緒だ。」

そう言って、優しい目をして香を見つめるタコの姿。それはまるで、巣立つ雛を見守る親鳥のようだ。

「大丈夫よファルコン。だって香さんの腕は、あなたのお墨付きじゃない。それに、あたしと香さんの息もぴったりだし。」

夫の言葉に頷きながらにっこりと微笑み、コーヒーを出してくれる美樹ちゃん。

そこに出来上がっている温かい3人の子弟関係は、俺が入り込む余地などないほどで・・・。

・・・どうも、今回ばかりは本当に俺はおまけらしいな・・・

逃走経路の確保と、非常事態の時のサポート。それが今回の俺の役割だ。早い話が、保険みたいなもんだ。


妙な疎外感を感じつつ、コーヒーを啜る俺。

ポーカーフェイスが得意な俺だが、美樹ちゃんの目は誤魔化せなかったらしい。香とタコがトラップの最終確認に地下に降りて行った後、カウンター越しに
話かけられた。

「ねぇ冴羽さん。今回の冴羽さんの役割は、香さんを支えることなのよ?彼女、あなた以外の人と仕事するの初めてでしょ?その不安を取り除いてあげるのが、冴羽さんの役目よ。・・・ファルコンと香さんが仲が良いからって、ヤキモチ妬かないのよ♪」

ニッコリ笑って、結構グサッとくる言葉を言う美樹ちゃんに、返す言葉もない。

「・・・あ、あははぁ~・・・な、なんの事かなぁ~美樹ちゃん?」

「んふふぅ~♡・・・ま、やっと冴羽さんも香さんと向き合う気になってくれたみたいだから、この辺で勘弁しといたげるわぁ~」

冷や汗が背中を伝う。・・・は、ははは・・・。

ガックリとうなだれていると、地下から2人が上がってきた所だった。俺の姿に、キョトンとした顔の香。

「撩?どうしたの?」

「・・・いんや。なんでもない。・・・で?最終チェックとやらは終わったのか?」

明日に迫った決行日を前に、最終チェックに余念がない2人。元々、下準備を万端にするタコと几帳面な香の性格を考えれば、そんな質問は愚問だとはわかっちゃいるんだが、聞かずにいられなかった俺が、実は一番余裕がないのかもしれない。

「大丈夫、必要なものは車に積めたし。海坊主さんとの連動も確認済みよ。あとは、明日現場での作業だけ。」

やや緊張した面もちで、自分に言い聞かせるように答える香の姿が意地らしくて、無性に愛おしく感じた。

「んじゃ、明日に備えて今日はもう帰りますか!」

そう言うと、香の肩を抱き、2人にひらりと手を振って俺たちはキャッツを後にしたのだった。


家に帰ると、パタパタと動き回る香。夕飯も、いつもより早めの時間に食べ終わった。

夕食後、後かたづけをしている香に声を掛ける。

「香。銃持ってこい。俺のと一緒に手入れしてやるから。」

お守り代わりとしての意味合いでしか持たせてこなかったが、明日は万が一にでも使用する可能性がある。そう思ったら、やはり自分の手で手入れしておいてやろうと思ったのだ。

「え・・・。いいの・・・?」

びっくりしたような顔の香に、苦笑しながら答える。

「いいから。早く持ってこい。槇ちゃんだって、たまには掃除してやらんと可哀想だろ?」

「・・・ありがと。撩」

そう言って、自室へと戻りローマンを手に戻ってきた香は、それを俺に預けると手入れをのぞき込む様に、俺の前に座った。

カチャカチャという音だけが妙に響いて聞こえる。なんて事ない作業だが、香にこうも見つめられるとドキドキしてしまう。

・・・なんだかなぁ~・・・

困惑した面もちでいると、香がぽつりと呟いた。

「・・・あたし、ホントに大丈夫かな・・・?」

自信なさげな顔をする香。そんな香を見て、思わず抱きしめた。

「・・・俺も一緒だ。もちろん、槇村もな。・・・今のお前なら、大丈夫だ。自分を信じろ。・・・お前は、俺の相棒だろ?」

香が、無言ですがりついてくる。その華奢な身体を抱きしめたまま、俺は香が落ち着くまで背中を撫でていた・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
すいません~(汗)カオリンがお仕事する所を書くつもりだったのですが、お仕事前の2人を想像してしまい、つい書いてしまいました(-_-;)

香も不安でしょうが、それ以上に撩も不安なのではないのかな・・・?と。次回はお仕事します!(断言)お待ちください~~
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【2013/10/29 19:00】 | To the destination ~しの様リクエスト~
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リクエストを下さった皆様、ありがとうございますm(_ _)m 順次取りかかっておりますので、暫しお待ち下さいませ。(なにせ、亀更新なため・・・)

スミマセン・・・(-_-;)


最近、天候不順が続いているせいか、体調を崩す方が多い様に感じます。皆様、大丈夫でしょうか?

私の職場では、すでに2人倒れ(11人しか居ないのに!!)その分が、残りの人にのし掛かっております・・・(涙)ただでさえ人員不足なのに~~!!

悲鳴をあげていたところに、本日更なる悲劇が・・・。「他部署研修」という名の、短期人事異動が発令されまして・・・。これ以上、人減らしてどうすんだ~~!!!と、騒いだのですが、上の方々には通じず、結局1名連れ去られてしましました(泣)

なので、このサイトにかけられる時間も少なくなっているのが現状です。連載中の作品だけでも早く仕上げたいとは思っているのですが・・・。

あぁ~時間が欲しい~~!!出来ることなら、私がXYZしたい!!・・・と思った今日でした(ToT)/~~~



早いもので、もうすぐ11月ですね~。そして、あっという間に12月がやってくる気が・・・。

我が家のちびさんは、まだサンタクロースを信じている様なので、こちらも用意する都合上、早めに知りたいとリサーチしたところ、驚くべき物を欲しがっていた事が判明。

「サンタさんへ 人体もけいがほしいです。よろしくおねがいします」

おいっ!!なんでそんなものが欲しいんだ!?普通は、おもちゃでしょう?と、手紙をみて、一人突っ込んでみた私。

しかも、今流行り(?)の某社からでているシリーズ物の組立式のが欲しいらしい。全部組み立てると110㎝位になる代物なので、とんでもございません。・・・だって、夜中に起きて暗闇にそんな物があったら怖いでしょう!!

そういえば、最近図書館から借りてくる本が、「人体の不思議」などの系統が多い・・・。

でも、どうしてもそれがいい!と言い張っているので、どう説得するか頭を抱える私・・・。

あぁ、なんでそんな物がいいんだよぉ~・・・(泣)色んな事に興味があるのは良い事だと思うのですが、困る事も多々ある・・・。

我が子の頭の中を覗いてみたい。と本気で思った私なのでした・・・


ところで、皆さんはいつまでサンタクロース、信じてましたか~?私は小2まででしたね・・・。今思うと、可愛いものでしたね(懐かしい)


もうすぐハロウィン。その後は、クリスマス、お正月。と、イベントが目白押しですね♪他のサイト様のイベント物が、今から楽しみです!

当方も、時間に余裕がありましたらチャレンジしたいと思っておりますが、取りあえずは目の前の仕事をやっつけてしまおうと思っております。

お時間がありましたら、またお立ち寄りくださいませm(_ _)m

【2013/10/27 00:53】 | つぶやき
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無言で帰宅した俺たち。香は一言も発しないまま、洗濯物を取り込んだり、夕飯の支度をし始めた。

ローテーブルの上に丸めた図面を放り投げると、俺は重く怠い身体をソファへと沈めながら、煙草に火をつけた。


「海坊主のやつ・・・。何も、香じゃなくてもいいじゃないか・・・」


放り投げた図面を横目に、ぼやく。それと同時に、香の他に誰がいるんだ?という思いも沸き上がってくる。

図面からして、相当厄介な建物だ。ということは、それなりのトラップが扱えなければ仕事にならないという事である。海坊主が中に入れない以上、ヤツが一番弟子だと公言している香が適任なのだろう。・・・実際、仕事のことになると、俺よりヤツの方がシビアな面を持ち合わせている。ましてや、今回は美樹ちゃんの命も掛かっているのだ。中途半端な人選は出来ないだろう。


キャッツで言われた美樹ちゃんの言葉が耳に残っている。


ー自分では何一つ教えないで、向き合おうともしないで!!この3ヶ月、彼女がどんな思いで訓練してきたかわかる!?どれだけの努力をしてきたか!?あなたの側に居たいからよ!?パートナーとして役に立ちたいからよ!?ー

立ち上る紫煙を見つめながら、その言葉の意味を考える。

・・・トラップの訓練で出来たであろう、小さな傷。格闘技を学ぶ中で出来た痣。そして、手に出来たガンタコ。それらすべてから、俺は目を背けていた。・・・香の実力を知ってしまったら、本当の意味で、香を裏の世界に引き込んでしまう気がして怖かったのだ。だが、これからも香とパートナーとしてやっていく以上、このままではいけないのだ。

俺は覚悟を決めると、夕飯の支度をしているであろう香の元へと足を向けた。




気配を消し、料理をしている香の背後に近づいていく。キッチンの入り口に立ち、懐に手を差し入れパイソンを取り出そうとした、その時だった。


「撩?何かあったの?」


香が俺のほうへ振り向いたのだ。

・・・気配は消していたはずだ・・・なぜ・・・?

呆然としている俺の元に、心配そうな顔をした香が慌ててやってきた。

「・・・なんで、何かあったと思ったんだ・・・?」

絞りだすように香に問うた。

「え・・・。あ、あぁ。だって、殺気を感じたから・・・。それに、撩の気配・・・っていうか、匂いもしたし・・・。家の中で撩の殺気を感じるなんて、よっぽどの事でしょ?・・・ところで、何かあったの?」

訳が分からない。といった様子で俺を見上げる香。

・・・香を試そうとした俺の僅かな殺気に反応したのか・・・。

そう、俺は香の実力を見極めようと、香に銃を向けようとしていたのだった。だが、その時に発した僅かな殺気に香は気がついた。俺は、自分の認識の甘さにため息をついた。この抜き打ちテストを不合格に終わらせ、香に今回の依頼を断らせるつもりだったのに・・・。完敗だ。

俺は、クシャリと香の髪を撫でると、とぼけた口調で誤魔化す。

「いんや。大丈夫だ。香ちゃんがちゃんと料理してるか気になって覗きにきただけ。・・・飯、まだ~?俺、腹減ったんだけど?」

「もうちょっとで出来るから。手洗って待ってて!」

そう言って再びキッチンへと向かう香の後ろ姿に一抹の寂しさを感じつつ、俺はその場を後にした・・・。



夕飯が済み、いつもの様にソファに寝ころんで雑誌を眺めて居ると、香がコーヒーを入れてリビングへ持って来た。

「撩?コーヒー置いとくわよ?」

そう言って、コーヒーを置いていこうとする香の手を、俺は無言で掴んだ。

「りょ、撩?」

動揺する香を引き寄せ、目の前にあるローテーブルに置かれた図面を広げる。そして、香の顔をしっかりと見て言った。

「この依頼、どうするつもりだ?」

途端、香の視線が俺から外れ、中をさ迷う。

「・・・あ、あたしには、無理よ・・・。だって、なにかあった時に、自分の身も守れないのよ・・・?2人に迷惑かけるだけよ・・・」

自身なさげな表情と言葉。それをさせているのが自分なのかと思うと、腹立たしくなる。

「・・・香。銃持って下に来い。おまえがどの程度上達したのか見てやるから。・・・それから、この依頼どうするか決めろ。」

そう言って俺は香の手を離すと、射撃場へと先に降りて行った・・・。



射撃場で的をボンヤリと見つめながら、ミックが香にコーチをしていた事を思いだしていた。あの短い間で、香はそれなりの成果をあげている。ならば、今の香ならーー?

期待と不安に揺れ動いている自分に、苦笑いする。・・・覚悟を決めたんじゃなかったのか?俺は・・・


ギィッと鈍い音を立てて射撃場のドアを開き、香が姿を表した。手には、ローマンが握られている。

「・・・あ・・・りょ、撩・・・。」

戸惑う香の背を軽く押し、ブースの前に立たせる。覚悟を決めたのか、香が銃を構え、的に銃口をむけた。

「・・・よし。んじゃ、まずは6発撃ってみろ。」

香の後ろに立ち、フォームをチェックする。構えは問題ない。

パァーン、パァーン・・・6発の銃声が響き渡る。

撃ち方も問題なし。ぶれもなく、ほぼ的の中心に全弾当たっていた。

「・・・やるじゃん。安定した状態なら、問題はないレベルだな。・・・美樹ちゃんには、動きながらの撃ち方とかは習ったのか?」

「・・・少し。空砲とか、ペイント弾とか使って・・・。美樹さんに的になってもらって・・・。でも、まだ安定してないから、中々思う様に当たらなくて・・・」

シュンとして俯いてしまった香に近づくと、ブースに置かれたローマンを取り弾を装填する。

「じゃ、今度はそれで俺を撃ってみろよ。どれくらいなのか、見てやっから。あ、中の弾はペイント弾だから安心しな。・・・ま、俺に当てられたら・・・の話だけどなぁ~」

軽い口調でそう言って、香を挑発する。だが、香が感情的になることはなかった。逃げ回る俺を追いかける様に銃口を向け、冷静に引き金を引いていく。驚く事にそれは次第に、俺の動きの先を読むものになってきたことだった。

パァーン・・・

6発全弾撃ち尽くした香。最後の1発は見事に俺のジャケットを掠めていた。

はぁっ・・・と、緊張から解放された香が、よろけて壁に寄りかかった。

「・・・は、早い・・・。追いつかない・・・」

そのまま、ズルズルと座り込んでしまった香の元に歩み寄ると、手を差し伸べる。おずおずと重ねられた手を引っ張りあげると、そのまま香を抱きしめた。

「ちょっ・・・りょっ、撩!?」

腕の中の香が、焦って俺を見上げる。汗と硝煙の匂いがする額にそっと口づけを落とすと、覚悟を決めテストの結果を伝えた。

「香。この3ヶ月頑張ったな。・・・さすが、俺のパートナーだ。・・・今度の依頼、受けろよ・・・。今のお前には、その資格が十分ある。」

俺の言葉に、香はびっくりした表情で固まっていた。

・・・無理もないか・・・

苦笑いしながら、言い聞かせるように同じ言葉を繰り返す。

「合格だって言ってんの。・・・まだまだな所も沢山あるが、それは追々覚えていけばいい。トラップに関しては、俺よりタコの方が専門だしな。そのタコがお前を指名してきてんだ。自信持って、依頼受けろよ。・・・もちろん、俺も一緒だ。・・・2人でシティーハンターだもんな・・・」

腕の中の香が、ギュウッと俺に抱きついてきた。泣いているのだろう、ジワリと俺の胸元が濡れてきた。

「・・・ありがと・・・りょう・・・。嬉しい・・・。あたし、頑張るから。だから、これからもよろしくね・・・」

「・・・あぁ、これからは美樹ちゃんだけじゃなくて、俺もお前の事鍛えてやるから覚悟しとけよ?」

そう言って香の顔を覗きこんだ。泣いているけど、本当に嬉しそうな香の顔がそこにはあった。その笑顔を見て、自分の選択が間違ってなかった事を確信した。


ー翌日、俺たち2人は、シティーハンターとして正式に依頼を受けることを、海坊主と美樹ちゃんに伝えに行ったのだった・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
撩の決意表明・・・と言った所でしょうか?カオリン、よかったねぇ~(涙)次回は、カオリン頑張りまっす!!

【2013/10/27 00:00】 | To the destination ~しの様リクエスト~
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それから数日後、思いも寄らないところから依頼が入った。


「XYZなの。依頼、受けてくれない?」


昼だというのに、準備中の札が下げられたキャッツでの美樹ちゃんからの依頼。

「美樹ちゅわんからの依頼なら、この冴羽撩、なにがあってもお受けします!!もちろん、報酬は撩ちゃんとのもっこりでぇ~♡」

勢いよくカウンター越しに美樹ちゃんに飛びつこうとしたら海坊主のヤツ、磨いていたトレーで俺の顔を叩きやがった。

「ってぇなぁ!!タコ!依頼なんだろ?だったら報酬もらったって良いじゃねぇか!!」

変形したトレーを顔から引っ剥がして海坊主に詰め寄ると、美樹ちゃんがにっこり笑って、衝撃的な事を言った。

「依頼は依頼なんだけど、今回は、冴羽さんにじゃなくて、主に香さんになのよ。・・・今回、冴羽さんはサポートに回ってほしいのよ。」


「「は・・・?」」


2人同時にきょとんとした顔で美樹ちゃんを見つめる。

「・・・どういうこと?」

我に返った香が、美樹ちゃんに聞く。・・・そりゃあそうだ。どう考えたって、普通逆だろ・・・?

「今回、あたしとファルコンが受けた依頼が、ある施設の破壊とデーターの持ち出しなの。でもその施設、中には加重センサーがあってね・・・。」

美樹ちゃんはチラリと隣の海坊主を見てから、話を続けた。

「ほら、施設を破壊するには、やっぱりトラップが必要でしょ?でも、ファルコンじゃ、とてもじゃないけど中に入れないのよ・・・。それなりに体重もあるし・・・。おそらく、60Kg以上は無理だわ。本人の体重の他に、トラップを仕掛けるための道具を持ち込んだら、それなりの重さになるでしょう?」

チラリと俺を見る美樹ちゃん。・・・勘弁してくれよ・・・

「だったら、美樹さんが中に入ってトラップを仕掛ければ良いじゃない!外は海坊主さんにまかせて・・・」

困惑する香。

「そうだ。それに、こいつの仕事は、伝言板の確認と依頼人との交渉だ。荷が重すぎる!」

反対する俺を無視して、美樹ちゃんがなおを食い下がる。

「・・・それが、無理なのよ。巡視の時間を考慮して、中で動ける時間は正味1時間弱。その時間内に、あたし一人でデーターの回収と施設を破壊するだけのトラップを仕掛けるのは無理だわ。」

「・・・でも・・・」

戸惑っている香をみて、美樹ちゃんが一枚の図面とペンを差し出した。

「ねぇ、香さんなら、この施設を破壊するのに、どこにどういうトラップを仕掛ける?」

おそらく、依頼を受けたであろうはずの施設の図面。それを、香はじっと見つめていた。

「・・・美樹さん、外は海坊主さんが担当してくれるのよね?」

そう聞き返す香に、美樹ちゃんは「もちろん」と答えた。


数分後。図面を見つめていた香が、黙々と図面にペンを入れ始めた。トラップの種類、設置場所、退避を考えた設置順序。驚くことに、それは、外で作業する海坊主の動きと連動させつつ、そして、データー回収をする美樹ちゃんの安全をも考慮したものだったのだ。

・・・こいつ、何時の間に・・・

トラップに関しては、俺も一目置く程の腕だが、ここまで緻密な事を考えられるようになっていたなんてな・・・

俺が足踏みして迷っている間に、香は努力をして、ここまでの実力を身につけたのだ。

反対しようにも、出来ないほどの出来映えだ。

そして、出来上がった図面を見て、美樹ちゃんがため息をついた。

「すごいわね・・・。ファルコンが考えたのとほぼ同じよ・・・。」

そう言って、カウンターの下から取り出したもう一枚の図面には、たった今、香が書いた物とほぼ同じ印が入っていたのだった。

「この施設の破壊には、中と外のトラップを連動させる必要があるの。そのためには、お互いの息があってないと出来ないのよ。・・・悔しいけど、あたしには無理だわ。こんなに緻密なトラップ。・・・お願いよ、香さん。この依頼、受けて!!」

必死に頭を下げる美樹ちゃんに、俺は言い様のない苛立ちを覚えて怒鳴った。

ー香に危険な真似をさせる訳にはいかないー

「いい加減にしてくれっ!コイツには無理な話だ!!行くぞ!香っ!!」

そう言って、香の腕を強引に引っ張り上げた俺に、美樹ちゃんがカウンターを叩いて声を荒げた。

「いい加減にしてっ!!今の香さんには、十分な実力があるわ!そうでなければ、あたしだってこんな事頼まない!それなのに、どうして!?」

感情的になっている美樹ちゃんの顔を見ないまま、感情を押し殺した声で答える。

「机上論と実践じゃ話が違う。まして、自分の身も守れないヤツには無理な話だ。」

掴んだ香の腕が、ビクッとしたのがわかった。・・・きっと、傷ついている。でも、それに対してかけてやるべき言葉が、俺にはなかった。

「・・・帰るぞ・・・」

そう言って香の腕を引いた時だった。


「・・・卑怯者!!香さんをパートナーっていう言葉で縛り付けておいて、自分では何一つ教えないで、向き合おうともしないで!!彼女がこの3ヶ月、どんな思いで訓練してきたかわかる!?どれだけの努力をしてきたか!?あなたの側に居たいからよ!?パートナーとして、役に立ちたいからよ!?それなのにっ・・・」

思いを吐き出すように話した美樹ちゃんは、唇をかみしめ、泣いていた。きっと、今の香の立場が、昔の自分と重なって辛いのだろう。ましてや、妹の様に可愛がっている香の事だ、感情的になっても仕方ないだろう。

それまで静観していた海坊主が、そんな彼女の背を撫でると、俺と香に言った。

「明日まで返事は待つ。・・・それと、今回の件は俺が言いだしたことだ。香の今の実力なら、十分だと判断したからだ。俺もプロだ。美樹と自分の命がかかっている仕事に、私情は挟まん。2人でよく相談しろ。おまえ達2人への依頼だ。」

海坊主はそう言って、2枚の図面を丸めると投げて寄越した。

俺は黙って香の腕を引くと、キャッツを後にしたのだった・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
思わぬところから依頼が来てしまいました。撩と香は、この依頼を受けるのでしょうか・・・・?

2人は、パートナーとしてどう向き合うのでしょうか?

【2013/10/21 19:00】 | To the destination ~しの様リクエスト~
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・・・俺は、どうしたいんだろうな・・・?

香が出かけて行った後、ソファに寝ころび、ボンヤリと考えていた。奥多摩での一件で、香に対する想いを告げた。あの時の気持ちに、偽りはなかった。

香が望むなら、何が何でも守り抜いて共に生きる覚悟も、決意もある。なのに、未だ最後の壁を超えられない自分がいる。

「愛するもの」と言っておきながら、香の気持ちを知りながら、香を「女」として見ないように逃げ回っている卑怯な自分。


・・・俺は、怖いんだ。香を女として愛してしまったら、今の心地よい関係が崩れてしまうことが。

CHの相棒というだけで、香は今までも危険な目に合ってきた。それに「CHの女」という肩書きが加われば、その危険性はより増してしまう。

ー失うことが、何よりも怖いー


先日、美樹ちゃんに言われた一言が、胸の奥にずっと引っかかっていた。

「香さんと、どうするつもりなの?・・・彼女は、あなたと生きていく覚悟は出来ているわ。そのための訓練だってしている。・・・前にも言ったけれど、この世界で生き抜くには、お互いが血にまみれる覚悟がないと無理なのよ?・・・それとも、まだ甘い考えをもっているの?いつまでも逃げ回っていたら、いつか本当に大切な物を失うわよ?」

ふと自分の両手を見つめる。

・・・この手で、どれだけの命を奪ってきたんだろうな・・・。

自分は、どんなに血と硝煙にまみれても構わないが、香にだけは・・・。という考えが、未だに自分の中にある事に気がついていた美樹ちゃん。

甘い考えだいう事は、重々承知している。これから先の事を考えれば、パートナーの俺が稽古をつけてやるのがスジだということも分かっていた。

だが俺は、稽古をつけてくれと何度も頼んできた香を、突っぱねたのだ。そして、本来俺がつけてやるべき稽古を、美樹ちゃんに押しつけたのだ。



・・・失う事が怖いなら、自分で自分を守れる様にしてやればいいだけのことなのに・・・。

今だって、きっと美樹ちゃんに射撃を見て貰っているのだろう。このところ鍛えているおかげか、身体は以前より締まって、動きも無駄がなくなってきた。

トラップだって難易度が上がっているし、仕掛ける速度も正確さも増している。

それを嬉しいと思う反面、苦しいと思うのは、俺の身勝手な思いか?


ふぅっとため息をつくと、今朝の香の顔が思い浮かんだ。

最近よく見せる寂しげな顔。何かを我慢して、耐えているような表情。そして、夜中に客間から漏れ聞こえてくる押し殺したような嗚咽。

こんなに近くにいるのに、何だか香が遠く感じることがある。

それは、きっと俺のせいだ。

「・・・自業自得ってやつか・・・?」

このままでは、仕事にまで支障を来すだろう。素人同然の香が、俺とパートナーを組んで来れたのは俺の力だけではない。香との信頼関係があったからだ。

きっと、今の俺たちは、脆い綱の上を渡っているようなものなのだろう。俺が香の立ち位置が変わることを受け入れ、香と向き合わなければそれは解決しないのだ。

「・・・どうすっかな・・・」

香とどう向き合えばいいのかわかっているくせに、あと一歩が踏み出せない俺。

そのことで、このあと俺は死ぬほど後悔する事になるのを、今はまだ知らなかった・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
撩の視線で書いてみました。あぁ、焦れったい2人です・・・(泣)

撩が「死ぬほど後悔する事」とは、一体どんな事なんでしょう?

【2013/10/19 19:00】 | To the destination ~しの様リクエスト~
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「りょおっ!!いい加減に起きなさ~い!!」

昼を過ぎても起きてこない撩を、いつもの如くハンマーで叩き起こすのが、日課になっているあたし。

「えぇ~っっ!!りょおちゃん、まだ眠いのぉ~。だって、昨日はミサキちゃんがなかなか離してくれなくってさぁ~♡」

「そんなの関係ないっ!ほらっ、さっさと起きる!!」

「へぇへぇ・・・」

シーツを剥がれ、仕方なしに部屋から出て行く相棒の背を見やり、ふぅっ・・・とため息をひとつこぼした。


奥多摩での美樹さん達の結婚式から3ヶ月。あれから、何一つ変わらない自分たちの関係に、あの時撩から聞いた「愛するもの」という言葉がの意味が、一体どういう意味だったのか、この頃分からなくなっていた。

「・・・家族って意味での『愛するもの』だったのかな・・・。」

撩にとって、自分は妹の様な存在であり、唯一の家族なのかもしれない。そう考えれば、この3ヶ月の2人の関係は納得できるものだった。

「・・・好き・・・なのよ。あたしは・・・」

ポロリとこぼれ落ちた本音。

自分の撩に対する感情は、兄貴に抱いていたような穏やかな愛情ではなく、嫉妬も含めた「女」としての恋愛感情だ。

撩がナンパをすれば、迷惑だという名目を付け、嫉妬の混じったハンマーをお見舞いする。依頼人にちょっかいを出せば、トラップという名の制裁を加えた。

・・・あたしは、どうしたいんだろう?パートナーでいたい。ずっとこのまま、撩の側で・・・。でも、「女」としての自分も見て欲しい。愛されたい。

でも、今の関係を壊してしまったら、もう撩のパートナーで居られなくなるかもしれない・・・?そんな不安が、ぐるぐると頭を過ぎる。

シーツを抱えたまま、答えの出ない思考に囚われていると、下からコーヒーの催促をする相棒の声が聞こえて来て、我に返った。

「はいはい!今行くから待ってなさいよ~!」


午前中の家事を済ませると、伝言板の確認を済ませ(相変わらず依頼はない)、キャッツへと向かう。

カラカラ~ン

「こんにちは、美樹さん。・・・今、大丈夫?」

店内に客が居ない事を確認すると、小声で美樹さんに話しかけた。

「えぇ、いいわよ。・・・ファルコン、あとよろしくね?」

快諾して店のエプロンを外し、プライベート空間でもある地下の射撃場へと向かう美樹さんの後に続くあたし。

そう、あの一件以降、時間をみつけては美樹さんに射撃や護身術を習いに来ているのだ。海坊主さんには、更に上級のトラップを。


「冴羽さんに頼めば良いのに。」

美樹さんに射撃を教えて欲しい。と頼んだ時に言われた言葉を、ふと思い出す。

ローマンの照準を合わせてくれたあとも、撩はあたしに射撃を教えてくれることはなかった。むしろ、射撃場に入るのもイヤな顔をする。

「あたしに銃の撃ち方を教えて。」

そう何度も頼んだが、返ってくる言葉はいつも同じ。

「そんなの、おまえに必要ない。」

このままじゃ、撩のパートナーとしても居られなくなる。焦りを感じたあたしが縋ったのが、美樹さんと海坊主さんだったのだ。


「香さん?大丈夫?」

美樹さんに声をかけられて、はっとする。銃を握りしめたまま動かないあたしを、不審に思ったのだろう。

「ごめんなさい。美樹さん。よろしくお願いします。」

そう言って、深呼吸すると、的に向かって銃を構えあたし。少しでも、撩に近づきたい一心で引き金を引き続けたのだった・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
しの様リクエストのお話がスタートいたしました。タイトルは、直訳すると「その先へ」です。

このあと、2人はどうなるのでしょうか・・・?

【2013/10/17 19:00】 | To the destination ~しの様リクエスト~
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「最近、乾燥するのよねぇ~」

「そうそう。ちょっと気を抜くと、すぐカサカサになっちゃって・・・。」

「やっぱり、リップクリームは欠かせませんよねぇ~」

昼下がりのキャッツで、美樹、かすみ、香の女3人で盛り上がるリップクリームの話。

「最近のって、色付きとか、香りがついたのとかもあるじゃないですかぁ~。ちょっとおしゃれでいいですよねぇ~」

と、かすみ。さすが、現役女子大生。

「そうねぇ~。でも色付きだと、ファルコンとキスしたのが分かっちゃうから、やっぱり私は普通のがいいかしら♪」

人妻の貫禄を魅せる美樹。隣では、真っ赤にゆで上がったタコが一匹。

「いいなぁ~。美樹さん。羨ましいっ!!」

キラキラとした瞳で美樹を見ていたかすみの視線が、今度は香に向けられた。

「で、香さんは、どっち派ですかぁ~?色付きですか?やっぱり、キスするときに邪魔だから、美樹さんと一緒で普通派ですか?」

ピキン・・・と固まる香。見る見るうちに真っ赤になっていく。

「あ、あたしは、こだわってないわよっ!乾燥予防になれば何でもいいのよっ!!」

そう答えて、慌ててコーヒーカップに口をつける香を見て、微笑む2人。

・・・やっぱり可愛いわよねぇ、香さんって・・・

・・・こんな所が、きっと冴羽さんにはたまらないんだろうなぁ~・・・

2人の視線に耐えかねた香が、早々にキャッツを後にしたのは、言うまでもなかった・・・



キャッツからの帰り道。たまたま目についた、薬局のオープニングセールの文字。

・・・何か安いかも・・・

セールという名に弱いあたしは、店へと向かい、歯ブラシなどの日用品を買い込んでいった。・・・と、ふと視界に入ったのは、さっき話題になった様々なリップクリームの並んだ棚。

「お客さん。今日は特別サービスで、この商品が半額ですよ~」

そう言って店員が差しだしたのは、ほんのりピンクの色付きリップクリーム。

・・・半額なら、いっか・・・

もし、撩が気づいてくれたら良いことがあるような気がして、あたしはそのリップクリームを買って帰ったのだった。


アパートに帰って、撩がいない事を確認して、こっそり客間のドレッサーの前に座る。

鏡を見ながら、買ったばかりの色付きリップを念入りに塗ってみる。艶がでた自分の唇を見て、うん。と頷いた。

「いいんじゃない♪」

ちょっと嬉しくなって、夕飯の準備をしようと客間を出た所で、帰って来た撩とぶつかってしまった。

絡まる視線。

「ん~・・・?お前、何塗ってんだぁ~?・・・口紅じゃぁなさそうだな・・・?」

ぐいっと撩の顔が近づいてきて、ドキドキする。

「・・・リップクリームよ。薬局のオープニングセールで半額だったの!」

「・・・ふぅ~ん。サクランボの匂いの色付きリップとは、また可愛らしいもん買ってきたなぁ~。」

からかう口調の撩に、ちょっとムッとして、ぐいっと両手で撩の胸を押し返した・・・はずだった。

一瞬の間に捕まれた両手首。壁に押しつけられた背中。暗くなった視界。そして、唇に感じた温かくて柔らかい感触。

目を閉じる事を忘れて、呆然としていた。

「・・・あ・・・・///」

離れた感触を確かめる様に、無意識の内に自分の指で唇に触れていた。

クシャリと撩の手があたしの頭を撫でる。

「・・・そのリップ、俺以外の前で付けんなよ?誘ってる様にしか見えねぇから。・・・それと、キスしたくなったら、今度からそれ付けとけよ?」

ピンッと、あたしのオデコを小突くと、手をヒラヒラさせてリビングへと消えて行った撩。

「ばっ///ばかっ!!」

そんな恥ずかしい真似できるかっ!!って、そのときは思ったけど、撩と喧嘩した後とか、素直に仲良くしたいって言えない時に、こっそり念入りに魔法のリップクリームを塗っていたあたしが居たのだった・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
久々に「お題」に挑戦してみました。色付きリップ、結構便利なので愛用しております。

カオリン、似合いそうですよねぇ~(//∇//) 

次回からは、しの様から頂いたリクエストのお話をアップして行く予定です。内容は原作程度、奥多摩後の2人。という設定で、切ないお話になります。

よろしければ、お立ち寄り下さいませm(_ _)m

【2013/10/16 00:00】 | お題
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こんばんは~(^_^)ノ

三連休、皆様どのように過ごされたでしょうか?

私は、珍しくお休みをもらい、家族で登山に行ってきました。標高2000m超えの山で、紅葉を愛でつつのんびりと・・・と思っていたのですが、通常1時間30分(もちろん片道)のコースを子供のペースで行ったら、1時間弱で到着するいう、登山という名のランニングでした(泣)帰りも、激走する彼を追いかけるのに必死だった私。なので、今度は近場の山で、今度こそ紅葉を愛でながら楽しく、正しい登山をしたいと思った3連休でした・・・(;^_^A

ちなみに、知人にそのことを話したら「うちも同じだった~!」と・・・。子供たちだけで先に行ってしまい、親が置いて行かれる・・・というのが定番なようで。

体力の有り余る彼には、次からしっかりと荷物を背負わせていこうと考えております・・・。




今後の予定ですが、次回は短編を・・・。と思っております。

そして、突然ですが、可能な範囲でリクエストを受けてみたいと思っています。(してくれる方がいらっしゃれば・・・の話しですが)

こんな駄文でもいいよ~。という方、そして、カオリンと撩。という組み合わせのみ。という限定でよければ、「はじめに」のコメント欄からリクエストをお受けしたいと思います。

新たな挑戦・・・。でも、サイトを立ち上げてから、密かに憧れていた「リクエスト」という物に、ドキドキしつつ、取り組んでみたいと思っています。

どうぞよろしくお願いいたします。

【2013/10/14 23:04】 | つぶやき
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あの一件から数日がたち、俺たちの仲は自然と周囲の奴らに知れ渡る事となった。

・・・まぁ、こんだけ俺の態度が変わりゃぁ、誰でも気づくか・・・

ベランダで、コーヒー片手に煙草をふかしながら、ぼんやりと空を見上げる。


あの夜、アパートに帰ってきた俺たちは、6年という焦れったい歳月をようやく乗り越え、正真正銘のパートナーになった。

自分の腕の中で、香が穏やかな寝息をたてて眠っているのをみて、嬉しくて眠れなかったのを思い出す。

あれからはもう、寝ても覚めても、香、かおり、カオリ、である。

家でも外でも、隙あらば絡んで、ちょっかいを出して、ハンマーを落とされる・・・ということを繰り返している。

日課となっていたナンパなんて、する暇もないくらいだ。



「りょおっ!!そんなに引っ付かれたら、掃除ができないでしょっ!!」

ついさっきも、階段の手すりを雑巾掛けしている香の魅惑的なヒップに手を伸ばして(ミニスカートなんぞ履いている香が悪い!!)ピシャリと、その手をひっぱたかれたばかりである。

「ふ~んだ。撩ちゃん、悪くないもんねぇ~」

俺としては、家事なんて放っぽって、24時間カオリンとイチャイチャしてたいのに。あんなことがあった2人にとって、今は蜜月・・・と思うのは、自分だけなのだろうか?

「忙しいから」という一言で、完全放置されて、ベランダでふてくされていると、屋上へと上がる香の足音が聞こえてきた。どうやら、往復しているようだ。



・・・そういや、あれから洗濯物の量、増えたからなぁ(にやり)

俺のベッドで2人仲良く眠るのが当たり前となっているため、毎日シーツ等を洗うハメになっているのである。

しかも、寝るのが夜中・・・というか、空が白み始める頃・・・だったりして・・・(笑)

さすがの香もキツくなってきたのか、昨夜はついに「一人で寝る!!」宣言をされてしまい、客間へと逃げ込まれてしまったくらいなのだ。

(もちろん、数々のトラップをくぐり抜け、夜這いに成功したのは言うまでもぬわぁい!少々傷を負ったが、なんのこれしき!)

だが、夜中に発動させたトラップの数々の騒音のせいで、隣近所から苦情の嵐が来たのは事実で。向かいの悪友からは、朝一で電話があったくらいだ。

「撩!おまえ、ついにケダモノと化したのか!?あぁ、可哀想なカオリ。今、僕が助けに行くからね!!」

(もちろんパイソンを突きつけ、丁重にお断りしたが)


パタパタと響くスリッパの音を聞きながら、ちょっと考える。

・・・まぁ、その、なんだ。家事の負担を増やしているのは、半分は俺のせいでもあるわけで・・・。

ガシガシと頭を掻くと、「しょうがねぇな」と呟き、屋上へと上がっていく。

洗濯物を干すスイーパーなんて、格好悪い・・・なんて言ってられん。なにせ、今夜のお楽しみがかかっているのだから。


屋上へと辿り着くと、香は丁度大判のシーツと格闘しているところだった。

「・・・貸せよ。手伝ってやる。」

「・・・あんたがそんなこと言うなんて、雨か霰でも降るんじゃないの?・・・やめてよね。唯でさえ量が多くて乾かないんだから。」

ガックリ(x_x;)・・・日頃の行いが物を言う・・・ってか?

「ん~?ほら、洗濯物の量増やしてんの、半分は俺の責任だしぃ?それに、カオリンに倒れられても困るし♪」

ボボボッと赤くなる香。

「~~~っ!だ、だっだら、少しは自重しなさいよ!!このままじゃ、あたし過労で倒れるわよっ!!」

「だ、か、ら、手伝うって言ってんの。・・・買い物もつきあうから、これ干し終わったら、ちょっとだけお昼寝タイムな?」

香の手から、洗濯物を奪い取るとサッサッと干し終え、クルリと香と向き合う。ヒッ・・・と逃げ腰の香をかつぎあげると、意気揚々とリビングへと降りていく。


「やっ・・・やだやだ!!あんたと一緒になんて、恐ろしくて昼寝なんて出来ないわよっっ!!」

リビングのソファに香を抱き抱えたまま、ゴロリと横になったはいいが、このところの所業のせいか、香がジタバタと暴れて逃げようとしている。

「・・・今は、本当に昼寝だけ。ただ、お前とくっついて寝てたいだけなの。・・・たまには、いいだろ?」

チラリと上目遣いで俺を見やる香に、苦笑いする。

「ほんと~に、何にもしないから。」

やっと信じてもらえたのか、ふぅっと香の身体から力が抜け、俺にすり寄ってきた。

「・・・おやすみ・・・」

リビングには暖かい日差しが差し込み、眠気を誘う。

こんなに穏やかな時間を与えてくれる香に感謝しながら、すうすうと寝息をたてている香の額にキスを一つ落とすと、俺も瞼を閉じたのだった・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
若干(かなり?)撩ちゃんが壊れております。・・・まぁ、我慢していた反動ですかね・・・?ナンパもせず、カオリン一直線な撩が、何となくかわいいなぁ・・・と思って書いてみました。・・・で、私的には、仲良くお昼寝している姿を、ミックがお向かいから激写してそうな気がします(笑)

【2013/10/14 22:30】 | How much is that time?
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さき
初めてコメントさせて頂きます~!!
つい先日お邪魔させていただき、一気に読ませて頂きました!!

どのお話も凄く素敵で(>_<)!!
私は、とてーも胸がキュン♡とすると、手先が痺れる癖?があるんですが、こちらの小説を読むと、もう指先が痛いほどジンジンして、胸キュンしっぱなしなんです!!!!

これは報告しなくては!!
と思い、コメントさせて頂きました<(_ _)>
「How much is that time?」はもう切なすぎて!!
こういうの大好きです!!!!

香ちゃんやリョウの口調?も、原作にとても忠実でいらして、本当に原作の続きを読んでいるような、幸せな気持ちになれました。
すっかりこちらのファンになってしまいました(^v^)
これからも、更新楽しみにしております。
微力ながら応援しています~!!

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腕の中には、長年の想いをやっと解き放ち、公私共に「終生のパートナー」となった女がいる。

ジワリと胸の奥から湧き出てくるような幸福感に、思わずギュッと香を抱きしめる。

おずおずと背中にまわされた香の腕が、心地いい。

ーもしかして、夢だったりして・・・?

あまりに幸せで、これが現実なのか自信がなくなってきてしまった。



「香・・・あの時のお誘いは、まだ有効?」

香の耳元で、そっと囁く。・・・夢なら、ここで終わるはずだ。

「・・・あの時って・・・?」

香は、何の事だかわからない。と言った感じで、きょとんとした顔をして、パチパチと瞬きをしている。

・・・やれやれ、このお嬢さんは・・・

香の額に唇を寄せ、意地悪くニヤリと笑う。

「そりゃぁ、2週間前のカオリンからの、あつ~いお誘いのことだよん♡」

ボボボッと、音をたてて真っ赤になる香。・・・可愛いすぎる。

「んなっ・・・なななに言ってんのよっっ!!」

慌てふためき、俺の腕から逃げだそうとする香をがっちり押さえ込み、頬にキスをひとつ落とせば、石像カオリンの出来上がり♪

「・・・で?まだ、有効?」

意地の悪い質問を繰り返す俺を、真っ赤な顔と潤んだ瞳で、キッと睨みつける香。

「~~っ/// 何バカな事言ってんのよ!!あんたが断ったんじゃないのよっ!!今更、なによっ!!どうせあたしは、あんたが唯一もっこりしない男女ですからねっっ!!!」

一気にまくしたてる香は、いつもの香で。なんだかちょっとホッとして、肩の力が程良く抜けた。



「・・・じゃあ、俺がお前にもっこりするの、ものすご~く我慢してたって言ったら、あの時のお誘い、まだ有効って事でOK?」

意地の悪い笑みを浮かべながら香の顔を覗き込むと、大きく見開かれた瞳には、今にも溢れんばかりの涙。

「・・・うそ・・・。」

即答かい・・・(泣)

「いや、マジだから。本当に本当に、もう限界。カオリンが欲しくてしょうがないの。・・・ていうか、もう、お前しかいらない。」

じっと俺の顔をみていた香が、ゆっくりと瞬きをする。ポロリとこぼれ落ちる涙に、思わず唇を寄せた。

「・・・ほんと・・・?」

「本当。槇ちゃんに誓ってもいいぜ?」

暫しの沈黙。

「・・・ほんとなら、いい・・・よ・・・。有効にしてあげる///」

そっと俺の胸にすり寄るように身を寄せ、小さな声で答えてくれた香が、たまらなく可愛くて、愛おしくて。もう、一時も離したくなくて。

「・・・やっぱ、海のみえるホテルがいい?それとも、アパートがいい?・・・あ、ラブホって手もあるけど?」

「・・・ばっ///・・・そ、そんな事、あたしに聞かないでよっ!!」

熟れ頃、食べ頃のお嬢さんが、更に赤くなって叫んでいる。

クククッと笑うと、姫の気が変わらぬ内に・・・と、ヒョイと抱き上げ歩き出す。

「ちょっ、ちょっと!りょお!!降ろしてよっ!」

「やだね。・・・さて、帰りますか。・・・やっぱ、俺たちには、あのアパートが一番お似合いだよな?・・・それに、アパートなら、じ~っくりたぁ~ぷり可愛がってあげる時間あるしぃ~♡なんたって、僕ちゃん、新宿の種馬だし♪」

そう言った途端、腕の中の香が、若干青くなったのは気のせいではないだろう。

喚く香をキスで黙らせ、俺達を乗せたクーパーは、一路アパートへと向かったのだった・・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
おまけ、です。ハイ。甘々、イチャラブを書くつもりが、何故か違う路線へ行ってしまいました・・・。すみませんm(_ _)m

やっぱりイチャラブな2人は、2人の原点でもある、あのアパートにあるのでは?という思いがあったので、その隙間を埋める形のお話を、今回書いてみました。

なので、もうひとつお話を書くつもりでおります。

カオリン、「新宿の種馬」の洗礼を頑張って受けてくださいな~。

【2013/10/07 22:55】 | How much is that time?
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長編の「How much is that time?」におつきあい頂き、ありがとうございましたm(_ _)m

たくさんの拍手とコメントを、ありがとうございました。あの後の2人が、どうなったのか気になるので、続編を~!というリクエストも頂いておりますので、時間をみてイチャラブな2人を書いてみたいと思っております(//∇//)


お返事を書いていて、気が付いたことがひとつ。1300パチ越えておりました!!びっくりです・・・(;゚д゚)

サイトを立ち上げて約6ヶ月。沢山の方に来ていただき、とても嬉しく思っております。

迷走しまくっているサイトですが、CH大好きな方々と交流できることが、私自身の元気の源でもあるので、どうぞこれからもよろしくお願いいたします。 



寒暖の差が激しい季節がやってまいりました。周囲では、風邪を引いている方も増えてきておりますので、皆様どうぞご自愛下さいませ。

お時間のある時に、ふらりとお立ち寄り頂けるとうれしいです(*'▽'*)

【2013/10/06 00:22】 | つぶやき
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Barを出た香を追って、街中を走る。

ーどこだ?どこにいる?ー

あの格好だ。そう遠くに行っていないはず・・・。

逸る気持ちを押さえて、一度立ち止まると・・・いた。3つ先の路地裏へと続く道へと入って行ったのを確認し、走り出した。


狭い路地裏で、逃げる彼女の腕をやっとの思いで捕まえる。

「放してっ!!」

「香っ!話しを聞いてくれ!」

「あたしは香じゃない!!放してっ!」

俺から逃げようと、必死で身を捩り、腕を振り解こうとする彼女ともみ合いになる。

もみ合ううちに彼女のバッグが手から落ち、バサッと中身が出てしまった。


「あっ・・・」


お互い一瞬動きを止め、バラバラになった中身をみつめる。そして、散乱した持ち物の中に、見つけてしまった。彼女が「香」だという証拠の品を。

化粧ポーチなどに紛れてにあったものーコルトローマンー。

ふぅっと小さく息を吐くと、しゃがんで一つずつ拾い、バッグの中へと入れていく。最後に、愛銃を拾い上げ、彼女と向き合う。

俯いたまま動かない彼女。

「少し、歩かないか・・・?」

俺は銃を腰にさすと、動かない彼女へと声をかけた。俯いたまま、小さく頷いた彼女の腕を取ると、俺はあの場所へと向かった・・・。



あの時よりも人通りはまばらで、数組のカップルが身を寄せ合っている程度だ。

あの時と変わらぬ場所。そこに着くと、俺は意を決して彼女と向き合う。

「香」

俯いたままの彼女の肩がピクリと跳ねる。もう、否定の言葉はなかった。

「香、聞いてくれ。2週間前のことだが・・・」

言い掛けた俺の言葉の続きを封じるかの様に、少し冷えた香の手が、慌てるように俺の口を塞いだ。

「いい。言わなくて、いいから。・・・ごめん。ごめんなさい。」

ーなんで、お前が謝る必要があるんだ?悪いのは、狡いのは、全部俺なのにー

震える手で、必死に俺の口を塞いでいる香の姿に、胸が締め付けられる。

両手でそっと彼女の手を掴むと、自分の口から手を離し、そのまま抱き寄せた。

「りょっ・・・」

腕の中で俺の名を呼ぶ香が愛おしくて、思わずギュッと抱きしめた。そして、そのまま、真実を口にしていく。

「2週間前、確かに俺はオンナと一晩一緒だった。だが、彼女は俺の昔馴染みの情報屋で、あと僅かな命だったんだ。その彼女からの依頼が、一晩一緒に添い寝して欲しいって依頼だったんだ。・・・迷ったさ。だが、・・・彼女の最期の依頼だったから受けたんだ。・・・信じてもらえないかもしれないが、彼女とは男と女の関係にはなってない。・・・黙っていて、すまなかった。」

「・・・え・・・?」

驚いて俺を見上げた香の瞳は、涙で濡れていた。

「俺は、お前に甘えてたんだな・・・おまえなら、何も言わなくても分かってくれてるって、思ってたんだ。・・・でも、あれから何もない上に、俺が朝帰りしたんじゃ、誰だって不安になるよな。すまない。」

ポロポロと香の頬を涙が伝っていくのを見て、たまらなくなって、そっと指で拭った。

「・・・じゃ、じゃぁ、どうして・・・?」

ーどうして、自分の告白に応えてくれなかったの?-

香の真っ直ぐな視線を感じて、照れくさくなった俺は、ふいと視線を外した。

「・・・その、なんだ。俺もあの時酔っぱらってたし・・・まさかお前から、あんな大胆なお誘いがあるなんて思ってなかったから、頭の中が真っ白になっちまって、なんて言っていいのかわかんなかったんだよ!悪いか!?」

最後のほうは、半ばヤケっぱちになって叫んでいた俺。あぁ~かっこわりぃ・・・

どうにも耐え難いむず痒さを感じて、頭をボリボリとかく。

腕の中の香は、きょとんとした顔をしたかと思うと、くすくすと笑いだした。

「なっ・・・なんだよっっ」

「だって・・・撩が、そんな風に思ってたなんて全然知らなかったから、なんだか可笑しくて・・・。だって撩なら、女の人にあれくらいのこと言われたこと沢山あるでしょ?」

上目遣いで俺を見上げる香。思わず、ため息が出る。

「・・・そりゃぁ、言われたことはあるさ。だけどな、自分が惚れた女から言われたのは、お前が初めなんだよ。だから、どうしたらいいのかわかんなかったんだよ。」

ボソッと呟く俺。

百戦錬磨の俺も、香には完全降伏、白旗をあげるしかない。何せ、今までの経験が何の役にも立たないのだから。



俺は腕を緩めると、そっと香を離した。そして、腰にさしてあった銃ーコルトローマンーを、香へと差し出す。

「香。お前を愛してる。こんな俺だが、お前がパートナーとして・・・俺にとっての終生のパートナーとして一緒にいてくれる気があるなら、これを受け取って欲しい。・・・もし、受け取ってくれるなら、もう二度と、お前を泣かせたりしない。約束する。」

俺なりの、香へのプロポーズ。もし、この手を取ってくれるなら、もう二度と離さない。

それが、どれほどの時間だったのかわからないが、香からの返事を聞くまでの時間は、俺にとってとても長く感じた。

おずおずと差し出された香の手は、俺が差し出したコルトローマンの上に置かれていた。

「・・・いいの・・・?あたしで・・・?撩は、後悔、しない?」

自信なさげな香の声と表情に、チクリと胸が痛む。

「お前こそ、俺でいいのか?言っとくが、これを受け取ったら最後、二度と離してやらねぇからな?」

ふるりと香の頭が横に振られた。

「撩が・・・撩じゃなきゃ、いや。撩がいい」

俺の手からローマンが離れて、香の手の中へと収まるのを、胸が苦しくなるほどの思いで見つめた。

ギュッと香を抱きしめる。

「もう、これでお前は俺から離れられねぇからな?覚悟しろよ?」

「あたしの方が、離さないわよ?」

お互い顔を見合わせると、くすりと笑う。そして瞳を閉じると、どちらからともなく唇を重ねたのだった・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
最後はやっぱりハッピーエンドでしょう!!最後に撩ちゃん、頑張りました!

おつきあい下さいました皆様。ありがとうございました。・・・ちなみに、このあとの2人はどうなったんでしょうか?!私的には、と~っても興味があるので、時間ができたら、番外編書いてみたいなぁ~と思っております。

【2013/10/04 23:00】 | How much is that time?
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「・・・人違いよ・・・。あたしは『リカ』よ。・・・それに、あなたとは今日初めて会ったのよ・・・?」

今にも涙がこぼれそうなほど潤んだ瞳で全面否定をする香。

「かお・・・」

言いかけた言葉を遮るように、今度は彼女が話し出した。

「私はあなたが思ってる様な女じゃないのよ。・・・今日だって、一晩相手をしてくれる男(ひと)を探してあの店に行ったのよ!?」

そう言って、バッグの中から彼女が取り出してカウンターに叩きつけた物・・・それは、それなりに厚みのある封筒だった。・・・中身は見なくても分かる。


ポロポロと涙が彼女の頬を伝っていく。

「・・・わかったでしょう・・・?あたしは、あなたの思い出の人でも、知り合いでもなんでもないのよ。」

封筒を握りしめる手が、震えていた。

「・・・お金で、男を買おうとするようなオンナなのよ・・・あたしは。」

消え入るような声で呟かれた言葉。



・・・ここまで、追いつめていただなんて・・・


目の前の彼女にかけるべき言葉が見つからない。

今まで、自分の揺れ動く気持ちのままに、彼女に恋愛感情があるような台詞を告げ、期待させる様な素振りを何度も見せてきた。・・・だが、直ぐに思い直す自分がいた。

ーこんな俺の側に居るべきオンナじゃあない。陽のあたる場所に帰るべきオンナだー

期待させて、裏切って。そうやって、彼女を何度となく傷つけてきた。

だが、人生のターニングポイントともいうべき海坊主の結婚式の時に、俺は決心したのだ。・・・香を愛して、守り抜いて行こうと。共に生きて行こうと。

「愛してる」と彼女に告げた言葉に、嘘偽りはなかった。でも、それ以降、俺は明確な態度や言葉で彼女に自分の想いを伝えていなかった。

6年という歳月を積み重ねてきたという身勝手な安心感が、俺の中にあった。

ー香なら、言わなくても分かってくれるー

俺の心の中に、そんな甘えがあったのだ。

そんな状態で、俺が朝帰り・・・他のオンナと寝てきたなんてことがわかったら、不安にもなるだろう。

また、期待を裏切られたのか・・・と。

その上、勇気を出して告白しても、返ってくる言葉や態度があれでは・・・。余りにも酷すぎる。

自分の身に置き換えてみたら、何と言ったらいいのかわからない程、酷い話しである。


ふと、ミックの言った言葉が頭を過ぎった。

ー香は、自分を抱いてくれる男を買うためにバイトをしてるー

息をするのも苦しくなるほど、ギリギリと胸が締め付けられる。

香が他の男に抱かれるなんて・・・ましてや、金で買った男と、愛情も何もない行為をするだなんて、考えただけでも気が狂いそうだ。

信じてもらえるかどうかは分からないが、あの夜、有紗との間には何もなかったのだという事、香だけを愛しているという事を、今伝えなければ、永遠に香を失ってしまう。そう、確信した。



我に返ると、香は、逡巡している俺から逃れるように、バッグを掴むとスツールから立ち上がっていた。

カウンターには一万円札が置かれている。

「さようなら」

そう言って、スルリと俺の腕をすり抜けてBarをでて行った香を、俺は追った。

もう、二度と傷つけない。そう、心に誓って・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
撩ちゃん、今回ばかりは、そう簡単にカオリンは許してくれませんよ~。頑張って、挽回してくださいね~。

【2013/10/02 17:00】 | How much is that time?
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